Reマルシェでつながる輪

Reプロジェクトは「つながり,再び」をコンセプトに,地域連携活動研究会(R.I.S.M.)と手を結び,長期間を見据えて続けていく新たな活動として,2017年5月にスタートした。Reは,「rejoin/再び仲間になる」「record/残す」「reuse/再利用」「rest/くつろぐ」の接頭辞から名付けられた。またR.I.S.M.の「relationship/人と人との結びつき」にもかかっている。これは,日本大学工学部が掲げる「LOHAS(Lifestyles Of Health and Sustainability)の工学」つまり,「持続可能で健康な生活スタイルのための工学」の理念にも共通する。工学部で学ぶ私達が,できることは何かを考えたとき,身近なことから取り組むことも必要だと考えた。

私は,建築研究会とR.I.S.M.が,それぞれ個人としてではなく,Reプロジェクトに基づく新たな活動として一緒にスタートを切ることが大切だと感じていた。その願いを「rejoin/再び仲間になる」と関連づけた。個々のサークルから,日本大学工学部から,そして思わぬ人達とも,くくりを問わず,繋がっていきたい。「再び」というのは,「かつては繋がっていた」とも捉えることができる。それをまた,取り戻したいという願いを込めた。またReプロジェクトのコンセプトの一つである「record/残す」は,建築研究会のこれまでの記録を今一度振り返り,そしてこれからの活動記録も積極的に残していこう,という志を表したものである。そして「reuse/再利用」「rest/くつろぐ」はReプロジェクトにおけるReマルシェにあたる部分のコンセプトである。現在,建築研究会にある木材を再利用すること,また数年に渡り,その木材が使われることを想定し,それを可能な考案に努めることをreuseに込めている。そしてrestは直訳されReマルシェでの休憩スペースを確保することを示している。

まずは,Reプロジェクトを進めるにあたりモチベーションともなるコンセプトに沿ったロゴの考案から始まった。それぞれがプレゼンを行った結果,建築学科1年生の案が採用された。伸び続ける「」を「繋がり」に置き換えた案であった。つまりは,建築研究会とR.I.S.Mから始まった現在の「繋がり」が,Reプロジェクトを通して,ここに留まらず,蔦のように伸び,さまざまな人達と繋がっていけるようにという展望を込めたものである。その後,みんなでデフォルメを行い,現在のロゴが完成した。

コンセプト,ロゴの次はマルシェの研究に入ることとなった。いざ「マルシェをやろう!」と意気込んだものの,そもそもマルシェとは何だろうか,という疑問に当たったからである。インターネットだけでは限界があると気付いた私は,情報を求めて研究室の先輩に相談をした。その先輩は,福島を拠点にしている「ライフスタイル工房」という建築設計事務所でアルバイトをしている。そこでは以前マルシェに使うテントを設計したことがある,という情報を得た。ホームページ上で見るだけでは,スケール感や雰囲気がつかめなかったため,許可を得て,実際に見せていただくこととなった。嬉しいことに,実際に倉庫でテントの組立て作業まで体験することができた。「角度のついた金物に,規定の角材を差し込む。」これがテントを組み立てる上で必要なたった一つの工程だった。つまり,ものすごく簡単な組立て作業であった,ということである。スタイリッシュなテントは,ものの20分で組み立てることができた。誰でも簡単に組み立てることが出来る利点に加え,角材のスケールの統一により,買い替えがしやすく経済的で,利用者にとってとても優しい設計であった。

後日,私達は,食大学が主催する「開成マルシェ」にお邪魔した。実際にマルシェでテントが使われる様子を見学しに行ったのである。木に囲まれた空間の中で,円のようにテントが点々とし,また多くの人も散らばり,互いに話し,座り,食べて,笑っていた。ローカルならではのマルシェは,とても素敵な空間であった。これらが5月下旬の頃の話である。ここからReマルシェの売り場となるテントの具体的な考案が始まった。

それと同時に提案されたのが,ワークショップの開催である。Reプロジェクトのコンセプトに沿ったもので,何かできないだろうかと模索した。初めは,建築研究会の部室にある使われていない木材で,木のスプーンやまな板などが提案されたが,限られた時間の中で実行することが難しいとされた。その次に出た案が「木時計づくり」である。木の板を手のひらサイズに切り,中心に時計用の穴を開ける。後ろから時計器具を差し込めば時計の基本は完成する。後は,お客さんに数字や絵を木の板に自由に書き込んで貰う。10分もかからずに完成できる簡単さと,木の板のreuseが叶うことから,このワークショップに決定した。

私は,長期休み中に四国にある直島へ行ったのだが,その最中に「ソーホースブラケット」を見つけた。島の人が,それを使ってテーブルを作っていたのである。それがReマルシェのテントの設計において,重要なヒントとなった。ソーホースブラケットとは,規格サイズの木材と組み合わせることで,作業台や簡易なテーブルを簡単に作ることができる道具である。(38㎜×89㎜)の木材を差し込み,山型に脚を開いて使う。片づけるときには,脚をぴったりと折りたたんで保管することができる。それにより,また来年へと持ち越すことが可能になる。これもまたreuseである。そこで私達は,山型に開いた三角の頂点をテントの屋根部材として考え,ソーホースブラケットをその継ぎ目に使うことにした。すると,テントの中に入って正面を向いたときに,身体の左右に来る材が三角形で構成されることとなり,斜めの部材をデザインとして簡単に起用することができた。早速この案を図面に起こし,みんなで検討会を行った。屋根の角度,筋交いの位置,スケールを,実際にスタディしながら決定していった。みんなの提案がやっと形になり始めた瞬間だった。

北桜祭の1週間前には,展示用に1つ,販売用に4つ,エコステーションに1つ,計6つのテントと,休憩所に大きめのテントを1つを,建築研究会とR.I.S.Mの全員で作った。その次の日に台風による影響で豪雨となり心配したが,テントは無事であった。Reマルシェでは,建築研究会からは従来の焼うどん,R.I.S.Mからはカボチャスープとスイートポテトをテントで販売し,Reプロジェクトから共同で,コーヒー(提供:富久栄珈琲)とクロワッサン(提供:焼き立てパン工房 ぶどうの木)を販売することとなった。

そしてReプロジェクトの理念に基づき「Reマルシェ」が今年度の北桜祭(2017.10.28-29)で催された。

最後になるが,建築研究会において,現3年生の引退は北桜祭となっている。それは長年の流れから,さも決まりのように感じているだけで,全てが正しいとは言えない。「引退」という変わり目は,「新たなスタート」でもあり,現2年生の個性を活かせる場でもある。そのためには,前世代が後世代への引き継ぎをしっかりすることが大切である。前世代の活動や功績が,後世代へ「つながり」,後世代が個性を活かしつつ「再び」活動を始めてくれることを願う。

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